自己愛性パーソナリティ障害

マリー=フランス・イルゴイエンヌ氏によると、「モラハラ」の加害者は、〈自己愛的変質者〉である、と述べられています。
そもそも、〈自己愛的変質者〉とは、どのような人を指すのでしょうか。

精神疾患には、様々なものがありますが、そのうちの1つに“パーソナリティ障害(旧:人格障害)”というものがあります。
現在のところ10種類の“パーソナリティ障害”があるとされています。

うつ病“パーソナリティ障害”とは、「境界性」とも言われ、うつ病(遺伝性のものは「精神病」に分類されます)などの「神経症」と統合失調症や双極性障害(躁うつ病)などの「精神病」の間に位置するとされています。

これは簡単に言うと、「性格が病む」(牛島定信『パーソナリティ障害とは何か』講談社現代新書、2012年)ということであり、それにより日常生活や社会生活に困難を来す状態のものが“病気”と判断されます。

なぜならそれは、もはや個性や性格といったことでは処理できないほど重いものだからです。

「境界性」の人々は、病状や原因にもよりますが、摂食障害・大量服薬・自傷行為・依存症・自殺未遂など、様々な命を危険にさらすような行為に及ぶ危険性があるため、医師による精神療法や薬物療法が必要になってくるのです。





しかしながら、「神経症」などのうつ病と違い、“パーソナリティ障害”の人々は多くの場合、当初は「自分がパーソナリティ障害である」という自覚=“病識”がない場合がほとんどで、「抑うつ状態」や「依存症」などの症状で、精神科を受診するケースが少なくないそうです。

で、その〈自己愛的変質者〉つまり「モラハラ」の加害者となりうる人は、〈自己愛性パーソナリティ障害〉という疾患を抱えた人であると考えられています。〈自己愛性パーソナリティ障害〉は、人により様々な病相を呈しますが、一番大きな特徴は、“愛しているのは自分だけ”ということです。

サンディ・ホチキス『結局、自分のことしか考えない人たち――自己愛人間とどう付き合えばいいのか』(草思社、2009年)は、〈自己愛性パーソナリティ障害〉の特徴を以下のようにあげています。

色々ないじめ

①恥を知らない
②常に歪曲し、幻想を作り出す
③傲慢な態度で見下す
④妬みの対象をこき下ろす
⑤常に特別扱いを求める
⑥他人を平気で利用する
⑦相手を自分の一部とみなす

〈自己愛〉とは、全ての人間が持ち合わせている物ですが、それが何らかの原因(多くは養育期における家庭環境が原因とされている)で、健全な成熟を遂げられずにまるで3歳児のような“全能感”の中に大人になってもそこから抜け出せない人が、こういった心の病を持つと言われています。

彼らの歪んだ自己像や周囲の人間に対する認知が、「モラハラ」を引き起こすと考えられます。

つまり、彼らの不健全な〈自己愛〉を何らかの要因で刺激してしまう人が、「モラハラ」の被害者となりうるのです。そして、彼らのターゲットに対する攻撃性の強さは脆弱で脆すぎる内面を防衛するための裏返しでもあるのです。